学習者の発話能力を捉える観点
先生方にご自分のクラスの学習者の発話能力についてうかがってみると、「あまりはなしません」とか「活発に話そうとしない」といった言葉が返ってくることが多い。
学習者が活発に話し合うすがたをゴールとしてイメージしながら、どうしたらそのゴールに到達するのか分からないと言う方も多い。
まずは、学習者の発話能力を詳細に把握することからはじめたい。
何十人もの一斉授業の中で、個々人の発話能力を把握するのだから、できるだけ多くの学習者に話をする機会を与えられるように学習そのものを見直す必要はあるが、学習者の発話能力を詳細に把握できるだけの観察眼を身につけた先生は、学習者個々人の発話能力に興味がわいてきて自然と学習者に話をさせたくなるようだ。
それゆえに、観察の観点はできるだけ分かりやすく簡潔なものでなければならない。
まずは、発話の単位。
実は、学習者の発話能力というのは、ある意味で捉えられない。発話行為とは独り言であっても必ず聞き手がいる。それが、先生に聞かれたことに答える場合とか、話し合い活動の中で発言する場合などは、周りからどう見られているかとか、誰か特定の相手に対して話したりする場合に感じるいろいろなプレッシャーなどに左右されるから、その場でその学習者が見せる発話能力とは、彼らなりの状況判断に基づいて調整されたものだからである。能力というと、最大出力を捉えているような感覚があるが、言語能力の場合は、状況判断力や、状況を超えた個人の発話傾向のようなものを捉えているに過ぎない。
ゆえに、学習者個々人が、学習する場所としての教室空間をどんな状況として捉えているかとか、どのようなコミュニケーションモードが許されている空間であると考えているかなどということをはっきりさせると、クラス全体を学習集団としてどう作り上げていくのかと言うことに見通しが持てる。
この六つの観点で把握してみるだけでも、先に述べたような漠然とした「うちのクラスの子はあまりしゃべらないんですよ」という反応はなくなってくると思う。そして先生方自身が直面する問題に対して具体的な学習をセッティングしていくことができるようになります。