聞く力の内実と効果的な学習
現在(平成21年)の私自身の考えは、言語能力に対する考え方でもあるのだが、「聞く力」も、何を意識して、もしくはどこに意識を向けて「聞いているか」という意識の側面に学習可能性を見出している。
しかし、この協同研究を行っていた当時は、授業の中で観察の対象となる学習者の聞き方をできるだけ「聞く力」との関係から捉えようと試みていた。その中でできたのが次の表である。学習者の聞く力を観察する際に多少役立つと思うので載せておく。
聞く力 | 聞き方 |
話し手に話しやすくさせる態度 | ▼相づちを打ちながら聞く ▼どんな内容でも、話し手の話しを最初から疑ったりせ ずに素直に聞く。 ▼話し手に注意を集中して聞く。 ▼ちょっと聞いたところでは関心が持てなくて 、つまら なそうな話でも、その話を最後まで聞く。 |
話し手の話を客観的に理解する力 | ▼話し手の言いたいことを考えながら聞く。 ▼話の組み立てを考えながら聞く。 |
話し手の話を自分と結びつける力 | ▼話し手の話を聞きながら、自分の持っていた考えをま とめる。 ▼話し手と自分の意見とに違いがないか、気をつけな がら聞く。 ▼話し手と自分の意見との違いに気をつけるだけでは なく、どこがどう違うのかまで考えながら聞く。 ▼話し手の話と自分の経験や体験とに違いが無いか、 気をつけながら聞く。 |
話し手の話を広げる力 | ▼話し手の考え方に、前後でうまくつながらないところが ないかに気をつけながら聞く。 ▼話し手が直接言ってはいないけれども、聞き手に伝え たいと思っていることが、はっきりしているかに気をつ けながら聞く。 ▼話し手が自分がそう思う理由をはっきり説明している かに気をつけながら聞く。 ▼話し手が話しているときに頭に思い描いている場面を 想像しながら聞く。 |
言外の情報に注意する力 | ▼話し手がなぜその話しをしたのかを考えながら聞く。 ▼話し手の気持ちに気をつけながら聞く。 ▼話し手の気持ちの変化に気をつけながら聞く。 |
理解状況をモニタリングする力 | ▼話し手の話の中で、自分が分かっていない所がない かに気をつけながら聞 く。 ▼話し手の話を自分がわかっていないのは、自分の聞 き方が悪いのか、相手 の話し方が悪いのか、考えな がら聞く。 |
話し合い全体を客観的に理解する力 | ▼話し合い全体の中で大事なところがどこにあるか、考 えながら聞く。 ▼話し合い全体の組み立てを考えながら聞く。 ▼話し合い全体の流れを考えながら聞く。 ▼今までの話し合い全体の流れを振り返りながら聞く。 |
話し手とほかの人とを結びつける力 | ▼今までの話し手の話を振り返りながら聞く。 ▼話し手が今はなしている話と、前に他の人が話した話とを比べて共通点や 差異に気をつけながら聞く。 |
こういった学習者の聞き方に目を向けながら観察を繰り返していると、やはり聞いているときの意識の向け方を指導する必要性を強く感じるようになった。
そこで下の図のような意識の枠組みを理論的に考案し、それぞれの意識を高める学習を考えた。
このような意識の向け先は、聞いている状況によって異なるものである。あくまで話し合いに参加しているときの方向性なのであって、たとえ授業中の学習者の様子であっても、教師の授業形態が講義型であるならば、聞くということにあまり意識的になる必要がないので、意識を育てることにはならない。
そしてこの四つの方向性を更に段階的に捉えると、次のようになり、それぞれの意識を育てる学習を構想するに至った。