コミュニケーションが生まれる条件

どのような状況を学習場面として作り出すか?

 学習活動の中に「話し合い」の場面を置くことで、学習に広がりが生まれますが、「話し合ってみましょう」という指示だけではなかなか話し合いに参加する学習者が少なかったり、話し合いが深まらなかったりします。

 そういう場合には、学習の仕掛け方に目を向けてより話し合いが活性化するように学習課題や目標などを工夫してみましょう。

 

@親疎の条件 

 学習者同士の人間関係について考えれば、親しくなればなるほど、コミュニケーションは必要ではなくなるのが真実。そうすると対話の基礎はやはり一学期に行っておく必要がある。  また、距離が開きすぎても話しにくいのは当然のこと。クラスの中だけではなく、学校の中の人々や地域の人々をゲストスピーカーとして招いて、学習者のコミュニケーション意欲を活性化しましょう。

 話をすることのおもしろさを経験的に学ぶことで、伝える工夫にも意識が向かい、学級の中での話し合いにも効果が発揮されます。

A既知・未知の条件

 お互いによく知っていることを話し合うことがないように、お互いに知らないことがあるか、どちらかが知らないことを知っているかという状況がコミュニケーションを生み出す。調べ学習などで作為的にこういった状況を作り出すことで話し合いが必要な状況を生み出すことができます。

B必要性の条件 

 話し合いの経験が積み重なっていき、話し合うことに対してポジティブに意識が形成されるためには、話し合うこと以上に結果や成果が大切。  話し合って何か役だったことを振り返りによって学習者に意識化しておく工夫が必要となる。

C言語化の条件 

 何もかもことばにして説明することが話し合いを活性化する要素ではない。ことばにしない方がよいことを推論し合ったり、ことばよりも効果的に伝えることが出きる方法を模索したりすることは、より効果的なコミュニケーション場面を作り出します。話すのが苦手という学習者も、じつはことばにするコミュニケーションが苦手なだけであって、図や表を作成させ、それに基づいて話をさせると以外に話ができるものです。  また、話し合いの話題設定においても言語化できるものと言語化できないものとが必ず存在していますからそのあたりに配慮をする必要があります。

D多様性の条件 

 図表やグラフ、映像や画像などを中心にした話し合いの学習場面が必要とされています。国語科では、とくに言葉に重点を置きがちですが、言語と非言語を効果的に組み合わせて、伝えたいことを良い分かりやすく伝えるおもしろさを学習にしてみてください。頭の中にある考えや調べ学習のまとめなどを行う場合に、どのように表現することが効果的に伝わるのかという意識を学習者に持たせることにつながります。

E対面性の条件

 メイルや携帯でのコミュニケーションが盛んになっている昨今、あくまで対面性を重視した話し合いの学習場面を構想する意義は、相手の様子や理解度を観察しながら話す方法を考えていく能力を身につけさせるためです。実際的な話す力とは、相手の様子を観察しながらリアルに自分の話す内容や話し方を再構築していく能力が必要だからです。

コミュニケーションを支える意識や感情 

コミュニケーションを活性化する方法の一つとして、学習者の知的欲求に訴えかけることが考えられます。

どういったポイントに働きかけるかは、学習として設定するコミュニケーションの目的によります。

 

 

@伝達の場合  

 伝達したいという欲求の根元には、相手が知らないことを知っているという状況が一番効果的だ。先にも述べたが調べ学習を班や個人で分担して行わせ、それを伝え合う場面を作ることが出きれば意識は活性化される。  さらに加えて、伝え合うことによって一つの目的が達成できるような状況を重ねていけば、調べたことを伝え合う必要性や見通しを理解した上で話し合いが進められる。

A議論の場合  

 議論する必要性を感じる状況とは、学習課題に対する答えが割れている状況である。根拠を明示しながらお互いの立場の違いを明らかにし、異なる考えを統合できればいうことはないが、これはなかなか難しい。  しかし、上手く統合ができなくても、やはり議論する経験自体の積み重なりが学習として必要だと感じる。

B説得の場合  

 説得したいと思うのは、自分の考えをはっきりと言語化でき、それに対して正当性を強く感じる場合である。また、説得する意欲がわくのは、自分とは異なる考えの他者がそこに存在する状況が必要である。学習者同士ではなかなか生じにくい場合は、教師がこの他者になることもできる。

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