No.30 教育におけるジェンダー
近年の教育研究では、学習の質を規定する要因として、学習者と教材との関係性に着目している。学習者が教材に対してどのような関係を取り結んだか、教材そのものが学習者の井戸のような関係を取り結ぶことを求めているか、という点が学習の質を規定すると考えているのである。
これは、非常に難しい問題で、学習者個人の経験や知識が大きく影響を及ぼしている。
国語で例を挙げるのが分かりやすい。「ごんぎつね」という新美南吉の物語を読むと、子どもたちそれぞれに注目する箇所も違えば、感想も違う。それは、子どもたちの持っている経験や知識の違いであると考えてきたのだが、それをさらにふかめて子どもたちがこの作品とどういう関係を結ぼうとしているのかという点において違いが生じていると考えるべきだ。
祖父母の死を経験した子どもとそうでない子どもでは、ゴンの死に対する捉え方は全く違う。それは正しいとか間違っているとか行った問題ではない。また、同様に祖父母の死を経験した子どもの中でも関わり方は異なってくる。
こういったことを考慮しながら教師は授業をするのであるが、経験や知識の違い以上に影響のあるものが「性差」ではないかという考え方がある。
確かに、冒険物語に対する反応も男の子と女の子では、全く違うだろうし、社会や理科などの教科内容でもそういうことは多々あり得ることだろうと推測する。
問題なのは、そういったことに目を向けることであるし、またそれぞれの立場からの意見を大切にすることでもある。しかし、社会的な影響が男性的理解に傾斜するとしたらこれは困ったことだと思う。
現代社会において、男性的理解がどれほど主流となっているかは大いに疑問なのだが、いずれに傾斜するのも問題だと思う。
ジェンダーを学習において意識することは、あまり注目されてこなかったことだが、これからは大いに注目される必要があるだろう。
男女共同参画社会などと言うことがいわれている現在、幼い頃から性差により意見の相違に注目させ、話し合いによって相互理解を持つ学習は必要だと思うからだ。
習熟度別授業
参考図書
「習熟度別・少人数授業」導入と運営の秘訣 小学校国語―意欲と学力を高める
土上智子 出版社: 学事出版 (2005/03)
綾部市立中筋小学校 出版社: 明治図書出版 (2005/09)
明石要一 出版社: 明治図書出版 (2003/11)