No.29 直観教授
明治の頃、語を学ぶ方法として、唯物示教(オブジェクトレッスン)という方法がとられていた。「たこ」という語を学ぶのに実際の「タコ」を見せ、視覚的な理解と言葉の理解とを併せて語の学習を行った。
これは、現代の認知科学的な考え方に基づくと、スキーマという概念の形成に当たるのだが、そうではなくて、視覚的な理解は古くから有効な教授法として捉えられていたという話なのである。
ベーコンの科学的研究方法に基づいて、ラトケが重視したのがこの直観教授なのだが、簡単にいえば、知識を知識として身につけるのではなく、自分を取り巻く世界をよく観察したり実験したりして、帰納的または演繹的に様々な法則や概念を学ぶべきだという考え方。
直観的に学び取っていることってたくさんあるけど、それを言語化したり体系の中で位置づけたりするのが勉強ということだと考えればよいのだけれど、直観的に学び取っていないこともたくさんあるわけで、そういうことを学ぶときには教師が学習として直観を持たせるところから始めなければならない。
これはちょっと経験したことや考えたことがないだろうなあと思う学習内容を学習として組織する場合、熟練した教師ならばやっぱり直観の形成をもくろんでいる。
例えば血液の働きを学ばせるときでも、とりあえず顕微鏡で血液を見せていろんなことを考えさせてからさあ授業という入り方をするのと、いきなり血液の成分を分類したものを出して授業にはいるのとでは大きく違うでしょう。
対象となるものとの関係を結ばせることから、学習が始まるという原理は、見る、聞く、触れる、押すなど様々な関係の結び方で行われる。そしてそれを経て言語化することが進められる。こう考えると、授業の導入がいかに重要なものであり、かつ、こうした観点を持つことがいかに重要かが分かるだろう。
習熟度別授業
参考図書
「習熟度別・少人数授業」導入と運営の秘訣 小学校国語―意欲と学力を高める
土上智子 出版社: 学事出版 (2005/03)
綾部市立中筋小学校 出版社: 明治図書出版 (2005/09)
明石要一 出版社: 明治図書出版 (2003/11)