No.11 「教授=学習」過程
授業の計画を構想するのは、教師の仕事であり、より多くの学習者により効果的な学習を提供する義務がある。
しかしながら、いざ授業をしてみると、なかなか自分の計画したように進まない、という経験は誰しもがするものである。
計画通りに行かないことが、必ずしも学習者にとって悪い状況を生み出すわけではないから、なおさら難しいと思うことがある。
教育実習生の授業などを見ていると、教師の計画は大失敗なのだが、それ故に返って学習者が頑張りを見せて、予想以上に学習効果の高い学習が成立したりする。
授業という現象は、教師の計画性に基づく「教授過程」と学習者の自発性に基づく「学習過程」の二つの過程が絡み合って成立している。理想としては、両者が等しいことが望まれているが、現実にはどうやったってずれが生じる。
教授過程と学習過程をイコールで結び等しい一つの過程として捉えるのは、より効果的な学習活動を実現するためには、二つの過程が効果的に関係付いて成立する必要があるということを示している。
まず、第一に、学習内容を共有すること。
教師の「教えたいこと」を学習者の「学びたいこと」に転化する工夫が施されなければならない。これは、これまでにも述べた動機づけが非常に重要なポイントとなる。
次に、学習法法や学習の順序を正確に示さなければならない。
これは教師の「説明力」が重要なポイントであり、分かりやすく説明ができなければ、学習活動を思うように導くことはできない。
そして、最後に「教授=学習過程」を振り返り、一つのプロセスとして位置づけなければならない。これはまとめの段階で、きちんと本字の学習がどのようなものであったのかということを明確に言語化しなければならないことを意味している。
最近の教育の研究では、「学習過程」自体が学習者個人によって異なることに着目し、「学びの道筋」をより学習者個人に寄り添って捉えようとする試みがなされている。学習者の行う授業後のポートフォリオなどはそれを狙って行われる場合が多い。
また、教師の意図と異なる学びが成立していることに着目した研究も進められており、「ヒドゥンカリキュラム」という名称で捉えられ、その内実が考察の対象となっている。
いずれにせよ、「学習過程」は多様で教師から見えない部分も多い。「教授過程」と「学習過程」とを結びつけていく工夫は、「教授過程」上の工夫に限らず、ここの学習者の学びに目を向け、観察し、そこで得た情報を教授過程の中に反映させていく必要がある。
習熟度別授業
参考図書
清水美憲 出版社: 学文社 (2010/05)
教授・学習過程論―学習の総合科学をめざして (放送大学大学院教材)
波多野誼余夫 出版社: 放送大学教育振興会 (2002/04)
岸俊彦 出版社: 明星大学出版部 (1981/01)