教材について

 「だいじょうぶ だいじょうぶ」ということばを通して、おじいさんとの関係を想起しつつ、その関係が変化したことを認識するまでのストーリーが描かれている。時系列で展開するストーリーではなく、自らの経験を捉え返す、ぼくの内面にわき起こる物語である。その意味では随筆に近い構成になっている。  一つの印象的なことばを出発点にして、これまでの自分の人生の中の重要な人間関係を思い描く。  この話は、学習者には一読して理解できるものだろうから、モデルにして表現学習へと誘いたい。こういったことばを出発点にして自分のこれまでの人生を振り返り、大切な人との関係が思い描かれる学習者はとても幸せな子どもだと思う。

音読教材として

 内容を理解して効果的に音読する事をねらいにすることは多いが、実はあまりうまくいかない。具体的に何を変えればよいのだろうかと思うことも多い。 読む早さなのか、間合いなのか、それとも思い描く場面なのか、  

 この物語だと、「だいじょうぶだいじょうぶ」の部分の読み分けを物語の展開に即して行うことが目標となるわけだが、最後の「だいじょうぶ」やおじいさんと二人でいう「だいじょうぶ」など読み手が明らかに別れる箇所はいいとしても、その他の「だいじょうぶ」はどうだろうか?  そこで、この「だいじょうぶ だいじょうぶ」ということばを発する際の状況を言語化していく方向を学習としては採る。  

 慰め、励まし、安心感を与えるためなどおじいさんがぼくに与えてくれようとしたものを推論して言語化することで、なぜそのように読むかという根拠が明らかになり、それぞれの読みがいかなるものであったかということを吟味する手がかりになるだろう。  またその反面で、ぼくがおじいさんからもらったものを言語化することでも同様のことが可能となるが、あくまで音声言語化するということであるので前者を選択する。

立場の変化と推論

 「だから今度はぼくの番です」と立場が変化してからの「だいじょうぶ だいじょうぶ」は何度も繰り返される。あえて読解学習を置くとすれば、ぼくがおじいさんに与えようとしたものは何かということを言語化させる。 また、ぼくの「だいじょうぶ」はおじいさんにだけ向けられているのではなく、ぼく自身にも向けられていることを明らかにし、その意味を見出させる学習を置きたい。

表現に接近させるために

 学びの手引きにもあるように、この物語の表現を通して強調表現や言い換え表現などを学習させたい。強調表現に関しては、強調されていることによって生じてくる微妙な表現生を見出させ、その効果を捉えさせる学習を置き、言い換え表現に対しては、同じ言い方でもイメージがより想起させられる表現効果を実感させるとともに、実際に学習者自身もことばを選んでよりイメージが想起するような表現が出きるように意識づけしたい。