教材について

 3編の詩はそれそれ単独で実践が積み重ねられてきている詩なので、五年生ということもあって、じっくりと読み深めさせたい単元である。3編とも近代詩としての作風があり、テーマへ構造的に導いていくことができるので、用いられている語句や表現の仕方に目を向けて深くテーマに迫らせる学習を構想したい。

晴間 三木露風

 写実的な詩であるが故に学習者にも読みやすい詩であるが、読み深めるとなるとポイントが探りにくい。五感に基づく表現がキーになりそうだ。一連目の遠雷の音に始まり、二連目の雨、雷、草の鳴る音と続く。三連目には、天候が回復したこともあり、静かになり色彩へと目が映る。この流れを対比的に捉えるのか、連続として捉えるのかは別にしても注目させる必要があるだろう。また、ここに描かれている一瞬の出来事は、様々な感覚や視点の移り変わりによって厚みのある表現になっている点も押さえておきたい。

海雀 北原白秋

 詩人の視点はどこにあるかという問も数多く実践されてきたが、波の表現との関係で、船に乗っているのかそれとも岸から見ているのかという点も考えさせたい。海雀=銀の点々という表現も手がかりにするとより具体的にイメージできるのではないか。また色彩表現の面からも考えさせたい。海雀とはネズミ色の小さな鳥であるが、それが銀の点々に見えるのはなぜかという問も面白い。学習者は泣いているからとか光に反射しているとか、様々な理由を挙げてくるのだがそうした推論を繰り返していく中でこの詩のイメージが形成されていけばよいと思う。

雪 三好達治

 色々と読み込むポイントがある。太郎と次郎の関係は?と問いながらそれぞれの屋根という表現に着目させると、兄弟ではないのではないかという考えも生まれてくる。降るではなく降りつむという表現から時間の凝縮生に目を向けさせ、さらには詩人の視点が現実には存在し得ないものなのかもしれないという点にまで至るとこの詩のできあがってくる経緯のようなものにまで考えを持っていくことができる。 感覚的な読みをフルに生かすならば、この詩の暖かさが、題名の雪との関係を新しい認識にみちびいていることも考えさせることができよう。  また、わずかに行の詩に込められた様々な思いや情景を捉えさせることで詩の凝縮性にも考えを及ぼすことができる。