教材について

 言語活動をナビゲートする単元に設定されているが、大島健甫さんの『手と心で読む』はかつて教材化されていたものであるため、ここに挙げておくこととする。  

 言語活動を導くための読み教材としての位置づけはこれから教科書教材でも増加すると考えられるが、枠組みが活動であるが故にその中にどのように読解学習を織り交ぜていけばよいのかという点に関しては先生方から質問を受けることがよくある。そうした点にも目配りをしながら授業を考えていきたい。

話題提供型の教材配置

 この単元構成では「伝え合う」ことが目的として記されているが、それだけでは何を伝え合うかということが分かりかねる。唐突に配置されている『手と心で読む』の内容に即して調べ学習を組織し、学級の中で伝え合う学習を組織することが伺われるが、その必然性が見えてこない。ゆえに私などは、まず教材の読解学習を軽くした上で学習者の興味の方向を教材の内容に向けてから活動に移ることを示唆する。この教材配列のまま授業を構成するといつどこで学習者の目的意識を明確にするかという点に問題が残るからだ。  

 学習者にとって教材に書かれている内容がどれほど興味を持てるものかという点はさておいて、「よく知らない世界」をみんなで力を合わせて調べて伝え合うことで、理解を深める学習としてのストーリー性を確保することに重点を置く。そのために、教材の読みとりを導くための導入に力を入れる。なぜこういった似ようについて理解を深める必要があるかということを学級の中で共有しておく必要があるからだ。

何を読み取らせ何を調べさせるか

 大島さんの経験談は何度読んでも心を打つ。大島さんの経験談を用いて、点字に関する理解を深めることの価値や意義をクラスで共有したい。さらに、歴史的な経緯を整理しつつ、最も目を向けさせたいのは様々な視覚資料を用いて、点字の実態や現在どのように使われているかを説明している点にある。この点をモデルとして使用しながら、学習者の調べ学習を導いていくとするならば、デジカメなどを持たせて、身の回りにある点字の写真を撮ってこさせ、それがどのように役に立っているかなどを文章化させる。もしくは、様々なパンフレットなどを集めさせ、点字で表記されているものを資料として用いさせる。  

 結局調べ学習は、その後どのように伝え合うかというイメージを持って始めないと、ただ単に集めるだけの学習に終わってしまうので、できる限りどのように伝え合うかという点に目を向けさせるために、「伝え方」に関する意識を高めておきたい。それ故にこの単元では視覚資料の収集と効果についてあらかじめ学習させておく。

視覚資料を用いた説明

 教科書にも挿し絵が挿入されているように、できればみんなの前で資料を持って口頭で発表させたい。その場合発表原稿の書き方を指導するわけだが、内容面に関しては教科書のナビゲーション通りでいいと思う。調べたことや調べた方法などから入って、資料の説明、感想と展開すればいい。 問題なのは発表の仕方の指導で、やはり資料の見せ方や聞き手の目のコントロールなど、大勢の前で視覚資料を用いて発表する方法を身につけさせておく重要な機会として捉え しっかりと指導しておきたい。声の大きさなどの基本的なこと以上に、資料の持ち方やどこをどのように指し示しながら説明をするかなど、原稿には、「どこどこを見てください」といったような聞き手の視線をコントロールするような言葉も入れておきたい。