教材について

 メカニズムの理解と説明は、時間軸による出来事の理解と説明からステップアップした説明的文章教材だと捉えている。時間軸に沿った認識や思考から、機能に着目した構造的理解へと学習が深まりを見せる時期だからである。  

 この教材は「かむ」ということのメカニズムの説明を中心にしてその意味や価値にまで言及する。学習のポイントとなるのはこのメカニズムと意味や価値の関係性をどこまで理解させることができるかという点にある。ゆえに個々に理解を深めた上で最終的には両者の関係に目を向けさせたまとめへと向かう。

「よくかんで食べなさい」という表現

 冒頭のこの表現はよくできている。学習者の日常生活と話題を結びつける効果を十分に発揮している上に、メカニズムを説明するところからその意味や価値にまで発展することを示唆している。  噛むことのメカニズムと、「よく噛むこと」の意味や価値との二つのまとまりを整理して両者の関係を考える学習に入る際には冒頭のこの表現に立ち戻ってみるのもよいだろう。  この冒頭の表現は、中盤にある「かめばかむほどいいことがある」という表現に結びついている。もちろんこの表現の裏には、「だえき」と噛むこと関係があるわけだが、そうしたことはメカニズムの理解を進める場面でしっかり押さえておきたい。

メカニズムと関係

 このあたりから本格的に図式化することによって理解を明確にする学習を仕掛けていきたい。板書で導くことが始まりだが、板書を学習者に作成させるような学習やプリントを完成させる学習などを意識的に仕掛けて、図式化する作業に学習者を巻き込んでいくことが必要だ。  例えば、かむという一連の動作を説明した箇所は、  

あごで噛む→食べ物の違いが脳に伝わる→脳から指令が出る→あごの筋肉が調整される→唾液が出る

といった連鎖を捉える図式に直さなければ文章だけでは理解が浅い。 これと同様のことが以下の記述にもあるため、ここで一緒にやっておいて、次から学習者にさせてみるような展開が考えられる。

関係認識をさせてみる

 かむことは最後に書かれているように、体全体に関わる大切な働きである。人間の体の仲でもいいし社会のシステムでもいいのだが、こういった関係に目を向けることでそれらの価値や意味が発見できるようになるといいのだが、四年生ではかなり難しい。  

 そこで言語活動としては、やはり関係そのものに目を向けそのつながりを説明してみることぐらいにとどめておかなければならない。矢印と空欄を使わせて作図させる学習と組み合わせていくと、情報源さえ確保してやれば意味ある学習として仕掛けていくことができるだろう。