教材について

 ストーリーをきちんと追いながら、人物関係の推移を捉える力を育成することを目指して学習を組織しようと思う。ゼノビアを中心にして、母親やビクターとの関係がストーリーの展開に即して推移していく点を会話文の読み取りなどと合わせて学習させたい。  ストーリー自体の原型はおそらく童話の「三つの願い」等にあるのだろうから、比較的理解しやすい。結局大した願い事もできずに、三つの願いを使い果たしてしまう結末などは、非日常の世界から日常の世界への回帰であり、日常の生活自体が本当は一番いいのだというテーマを見出すこともできよう。  また、君たちならばどんな願い事をするかということを考えさせながら、創作的な表現活動へと展開していくことも考えられる。三つの願い事に場面が強制的に成立するので物語文の創作にはいい契機かもしれない。

ビクターとの友情をどのように読み取らせるか

 四年生だし、そろそろ抽象的な言葉を具体的に説明させる学習を置いておきたい。説明文では、具体的な文章と抽象的な言葉を結びつける学習がメインになるので、物語文では、少しまとめたり、自分の経験を入れたりして説明する学習が適当かと思う。そこでこの教材などはビクターとの友情が様々な観点から間接的に描かれているので、そういった表現を手がかりにして、二人の友情を言葉にして表現させたい。  

 ポイントとなるのはまず呼称。ビクターだけはレナとよぶわけだが、これがまず二人の友情のあり方を間接的に表現している。なぜレナと呼ぶのかについては説明されているので、ゼノビアにとってレナと呼ばれることの意味と、ビクターにとってレナと呼ぶことの意味とを考えさせながら二人の友情に結びつけていきたい。  

 二つ目は、母親とのやりとり。この世で一番大切なものはいい友達」といわれることでビクターとの関係を考え始めるゼノビアの心理描写をまとめながら、二人の友情に結びつけていく学習がある。  結局、この二つのポイントで、二人の友情についての理解を深めておくことで、三つ目の願いがなぜこのようになったのかと言うことを理解する学習へとつながる。

一セント玉のもたらしたもの

 四年生だから、放っておくと、三つの願いが結局つまらないものになってしまって、笑い話か何かと理解してしまいかねないので、あえて、1セント玉のもたらしたものについて考えさせたい。これはいうまでもなく、友情について再確認できたと言うことなのだが、なかなかそこには行かないで学習が終わってしまう。  

 時間があれば、民話教材の「三枚のお札」などと比べ読みさせてこの観点を学習者に自然に持たせるような学習を組織するのだけれども最初の授業だしテンポよく行こうとするならば発問でもいい。クラスはマダでき上がっていないので(持ち上がりなら話し合いにいく)ペアトークあたりで考えを交流させて集団づくりの下地にするだろう。

あえて音読指導へ行くならば

 読み取った内容を生かして読むという目標を立てる人がいるが、実際にはこれはなかなか難しいし、クラスの中で読み方をめぐって話し合うことも難しい。何故なら相対化できないからだ。このレベルの物語文は、内容が深いので効果的に読もうとすると演劇的な素養が必要となる。それは四年生にはないので、実際にやらせてみると上手くはいかない。  

 音読することによって、教材の理解を深めようとするならばポイントを絞って場面ごとに音読させるのもいいだろうが、あくまで発問で行きたい私なんかは少し煩わしく感じることもある。  

 そこで、この話を知らない人に読み聞かせる学習課題に変える。対象はおそらく母親か父親にする。四年生になるといったん親子関係が揺れを持つ場合が多いので、子どもの学習に親を参加させる意味でも宿題や課題に保護者を巻き込んでいく工夫が必要となる。そうした場合、評価者として巻き込むのではなく、理解者として巻き込む方が関係がいい。