教材について

 定番教材なのでやり尽くした感がある先生もいらっしゃるだろう。ここでは、標準的な観点を示す。でもこの教材はやっぱり野原にタンポポがある内に読ませたい教材だ。時々教科書を順番通りされる方からこの教材をやる頃にはタンポポがないので困るという話を聞くが、順番を変えればすむことである。  この教材あたりから、書き方の工夫に目を向けさせ実際に表現学習へとつないでいく展開が求められる。ここで説明されているのは、時系列の変化とメカニズム。時間に沿って変化していくものをどのように観察しどのように説明するかという点と綿毛を飛ばすメカニズムと仲間を増やすメカニズムの二つのメカニズムをどのように説明しているのかという点に目を向けさせたい。

観察と変化の記述

 ものの変化を記述しようとすると、どのように観察するのかという点とどこを観察するのかという点が重要となってくる。花が開花してから綿毛ができるまでのタンポポの変化をどのような時系列でどのような点に目を向けて説明しているかという点はやはり表にして整理させる。  ふきのとうでも述べたが、やはり二年生からは書いてまとめながら読むことを学習に意図的に織り交ぜたい。いっぺんに頭に入らないし見て理解する方が分かりやすいので、この方法は役立つ読みのスキルである。図式化の方法も様々あるので表現に即して様々な図式かが行えるようにしたい。導入ということもあるので図式化はみんなでやって掲示していく方法もある。学習の流れがクラス全体で視覚的に作り上げられていくので学習展開への理解も深まる。

メカニズムの説明

 綿毛を飛ばすメカニズムは、一度倒れていたくきがもう一度起きあがることにある。結局メカニズムは目的とメカニズムの関係で理解するので、結びつき方としては逆になるのだが、綿毛をとばすためにもう一度くきが立ち上がるという関係で押さえおきたい。この関係を理解する機転となる問が「なぜこんなことをするのでしょうか」という表現であるから、こういった発問を仕掛けていくこともできる。  

 また、仲間を増やすためのメカニズムは「あちらこちらにたねをちらす」ことなのだが、「綿毛を遠くまで飛ばす」という表現との関係を読み取らせたい。そうすると重要になる表現は「とおくまで」という部分になる。単に綿毛をとばすだけなら実は茎を伸ばす必要はあまりない。この「とおくまで」という表現があるので「あちらこちら」という表現が出てきている。この二つの表現の結びつきは目を向けさせたいポイントだ。

「たんぽぽのちえ」とは何か?

 ちえが「知恵」であることが理解できない学習者に抽象的な概念はどうなのかと疑問を抱いた時期もあったが、学習者は以外に生活の中で「ちえ」に触れているのでいけなくはないと思い直している。  抽象的な概念を具体的な説明を受けて理解していくことは、国語科に限らず全ての教科で必要とされる理解の方法である。国語科ではそれを特に取り立てて学習できるのでこの学習はしっかりここで行っておきたい。  まあ結局は具体と抽象の行き来をするということなのだが、「たんぽぽのちえ」を短く説明させるまとめ方から、自分で調べ学習をして「○○のちえ」という説明をさせる発展学習が効果的だろう。表現学習に流れるのならば、観察から変化を記述させる方が面白いと思うのだが・・・。