教材について

 典型的な論説文教材だと思う。メデイアリテラシーに関してどのように関心が深まっていったのかということを筆者の言葉で語りながらも、それがやがてメディアリテラシーを学ぶことの現代的な意義の主張へと結びついていく。さらっと読みやすいようで、それぞれを関係付けながら読み解かないと、筆者の主張の根拠が見えてこない。それ故に、学習は詳細な読解になる。しかしプリントへの書き込みなどで視覚的に文章の構造や関係性を理解させたい。

概念の説明と理解

 前半部分で学習のポイントとして考えたいのは、メデイアリテラシーに関心を深めていく筆者のプロセスよりもそこに埋め込まれている「メディアリテラシー」という概念の説明である。一見、メデイアリテラシーの危険性を情報の扱い方の主観性に触れながら提示しているように見えて、やはり、「メデイアリテラシーとは一体何なのか」という点に関する言及に重点が置かれている。 整理するポイントとしては、
①理解者としてみたメデイアや情報の特質、 
②表現者としてみた情報発信の特質、
の二点になるのだが、後者がやや薄いので学習者に考えさせるポイントとして設定しようと考える。 またメデイアリテラシーがなぜ現代社会における基本的な読み書き能力になるのかという点に関する説明も丁寧に押さえさせたいポイントだ。社会状況の説明から結びつけられていくこの説明の過程は丁寧に押さえさせたい。

主張と根拠

 論説文らしさがよく分かる教材だけに、筆者の主張に至る説明の道筋を丁寧に押さえたい。  

 ①メデイアを通して発信されている情報の恣意性・・・前半部分の例示
 ②メデイアリテラシー=基本的な読み書き能力・・・後半の社会状況 あたりの関係性

 これらの把握の中心にして、「メディアに主体的に関わっていく」とはどういうことかという点を考えさせたい。もう三年生になっているので、筆者の意見とその根拠とい言葉によって、こういった関係性を捉えながら読む習慣?能力を身につけさせたい。

発展学習として

 こういった論説文がもう一つ持っている役割として、メタ認知の形成がある。この教材ではメデイアリテラシーという学習内容についての理解を深める事が目指されるべきだ。そうすると一連の学習として考えるならば、この教材で学んだことを実際のメデイアの分析に生かしてみることで、学んだことが学習者の中に定着していくこととなる。
 それ故に、教科書では新聞記事になっているが、本当はテレビニュースなどをビデオにとって見比べながら批判的に捉えさせる学習もおもしろい。特に文章教材に対してさらに文章教材を重ねる学習は学習者の意欲を低下させることが多いのでなるべく違う媒体のものを教材として用いた学習を構想したいと考える。  また、上の学習はあくまで理解者としてのメタ認知の形成をねらったものであり、もう一つの側面として表現者としてのメタ認知の形成をねらった学習も必要となる。これも教科書に載せていることだが、当然意見文の指導につなげていく道筋を考えておかなければならない。高校入試などで意見文が出題される場合は特にそうだ。しかし、意見を持たせるための調べ学習が必要となる上に、作り上げた意見を意見文にするためには根拠との関係を把握させなければならないのでかなり長時間必要となることは覚悟しなければならない。