教材について
思春期にさしかかる頃の少年、少女は、自分の内側からこみ上げてくる変化のエネルギーを理屈ではなく、もっと直感的に感じる。誰かに変えられていくのではなく、自らの内なる何かが、自らに変化を強いているのである。それは、最初はかすかな「響き」の発見から始まる。その「響き」が次第に強くなっていくにつれて、驚きや痛みを伴ったリアルな「響き」へと増幅されていく。この秘められた出来事はやがて、隠しきれないくらいに溢れくる「響き」となって、やがて「わたし」自身をも壊していくのである。
この思春期特有の荒々しい肉体的・精神的変容を「響き」としてとらえ、それに対するとまどいや恐れ、痛みといった心の動きを余すところなくとらえている。さらに、その「響き」によって、自らが割れてしまうことに対して恐れを抱くのではなく、さらに自分を響かせる未知なる山との出会いに期待を膨らませることのできる健やかな若者の精神の強さが本作品の主題であろう。