教材について

 中学校の古典教材の中で、古文教材よりも漢文教材の法が授業を考えやすいと感じることが多い。それは、漢字文化に密接に関係する教材が上がっているからだ。ここで扱われている「矛盾」も使い慣れた故事成語である。故事成語からはいるということは、現代の漢字文化の中に漢文が息づいていることを実感させることにねらいがある。短く凝縮された漢字の中に実はストーリーがあって、それを受容した過去の日本人が、そのストーリーを意識しつつも日常生活の中で類似する自分の経験を語り出すときに故事成語としてそういった漢語を用いたということを学習者に理解させたい。

詳細な読解よりも敢えて言語活動を仕組む

 故事成語は、多種多様である。様々な漢語が日常生活の中で用いられている。重要なのは、その凝縮された表現の背後に存在するストーリーとの関係である。そういったものを背後に持ちながら日常的に用いられている言葉があるということを実感させるためにも、「故事成語」と「背後のストーリー」をセットにした調べ学習を構想する。  

 学習者個々人にするか班でするかはクラスの状況によるのだが、参考文献などを示しつつも、中学校における調べ学習の初めとしたい。パワーポイントなどを使ってプレゼンテーションをすることも時間のゆとりがある時は考えたい。漢文そのものと日本語訳の両方に触れながら調べ学習を進め、互いに調べたことを報告し合うことで学習が成立する。

漢文の音読

 旧仮名遣いになれることは言うまでもないのだが、「が」や「は」が抜ける文体や、言い切りの簡潔な形を音読によって実感させたい。幸いにして、読み仮名付きの原文だけに、学習者個々人に簡単に音読させることが出来る。 問題なのはリズム。言い切りの形が簡潔なだけに、文と文との間の間合いを取ることに意識して、音読させることが重要であろう。  

 また、過去の実践などでは中国語で読まれているものを聞かせながら、白文を紹介したりすることも考えられている。書き下し文と訳文とだけではなく、白文も一緒に触れさせるにはいい導き方だといえる。

比喩表現として

 韓非子の原文では、「矛盾」はたとえ話として用いられている。つまり、原文ではこのストーリーの前後があるということだ。韓非子の思想なんて中学校一年生には難しいと考える方もいると思うが、漢文に対する興味や関心は、実はこういった本格的な姿を見せることで喚起される場合が多い。  

 現代語やくか書き下し文でいいから前後のストーリーを付けた形で見せることで「矛盾」の寓話としての意味を発見させる学習も発展学習としては考えられる。