教材について

 中学生がレポートを書くことがあるのかなあ?と思うが、結構付属中学校などの実践では専門的な研究活動を中学生なりに書かせる学習を展開したりしているのを見ることがある。また、総合学習などのまとめなどもレポートの形にしている実践は多いので、中学生でもレポートを書く機会は増えているように思う。  いうまでもなくレポートとは報告文である。報告文は事件や事実、経験したことを詳細に記述することが社会では求められることが多いが、ある種の課題やその解決策などをレポートすることもある。
 この学習のターゲットは二つ。課題やテーマに即した「調べ学習」の方法を身につけさせること、もう一つは分かりやすいレポートの書き方を学ばせることである。

目を使って考えさせる

  これまで行われてきた作文学習でも、構想の段階で文章の内容を図式化したり箇条書きしたりした上で、目で見ながら文章構成などを考えさせる学習は存在していた。目を使って考えることは我々大人は効果的に行っている人が多いが、それは人間の頭の働きでは一度に複数のことを考えられないので、書き出して目を使って考える工夫を施す必要があるからである。
 ワードマッピング法などで、既有知識の連鎖を視覚化して考えていく方法もあるが、この学習ではあくまで視点にこだわりたい。一つの課題に対してそれを解決していくための細かな問いを立てさせるのであれば、テーマに即していくつもの問いを考えさせ主要な問いを設定させてそれに対してその他の問いを結びつけていくような学習が考えられるがそういった場合はカードを使うと効果がある。
 設定した課題に対して、視点を複数挙げていくことは中学一年生にはやや難しい学習になるので、テーマを共通のものにして教師の発問などを組み合わせながらなるべく複数で考えさせる学習を構想する。ポイントは、視点となりうるレベルの抽象的な思考へといかに導くかということにある。教科書の例に挙げられているように、鉛筆が六角形なのは何故かというテーマに対して、歴史、比較、順序、使い方、種類など、少し抽象度の高い視点が必要となる。なぜなら、それに基づいて調べ学習を展開しなければならないからだ。  そうなるとモデルがいるなあ、と考えてしまう。課題を解決していくための視点は、当然、時系列による問い、比較対照による問い、機能やメカニズムに関する問い、などどんなテーマにでも共通する視点が存在するのだが、これを学習者自身に発見させるのは難しい上に時間がかかる。説明文教材の該当個所などをモデルとして読ませたりすると効果がある。

情報カード

 私自身も情報カードを使っているのでその便利さや効果はよく知っているつもりだ。振り返ってみるともう少しはやく情報カードの使い方を知っていればなあと思うので中学生のうちにこういったことを学ぶことは意味あることだと思う。
 問題なのは、使い方。題も自分なりに分かりやすく付けなければならないし、出典も明らかにしなければならない。出典の件も含めて、誰のどういう考え方、誰が調べた事実か、などが何故重要になってくるのかを学習しないとあまりこう言ったことを学習させても、効果はない。
 また、カードは、構成を考える際に使うだけではなく、記述されている内容が文章の内容として用いられることを十分配慮しなければならない。「引用」の仕方を学習させなければならないということだ。文献やウェブなどから写したことがそのまま文章になったのではレポートといえない。あくまでレポートは報告文であるのだから、報告する主体がきちんと文章の中に出てこなければ、テーマに即して情報を集め、継ぎ接ぎした文章になってしまう。
 そこで「引用」という技術は実は結構難しくって、卒論の指導なんかでも手こずるものだが、まずは、なぜそれを引用したかという意図を明示することや、それが一体どのような意味や位置づけを持つのかという解釈をすることの二点くらいに絞って指導する。もちろん推敲の段階でもこの二点には意識を持たせておく。  

見出しのある文章を書く

 レポートは簡潔であることが大切だ。だらだらとたくさん書くのがいいことだと思っている学習者には、よい機会となる。短く、簡潔に、などという指示をしても今ひとつぴんとこないので、文章構成を考える際に見出しを考えさせる。
 見出しは目次としてきちんと提示するようにしておけば、それだけで、学習者が今までに書いてきた文章とは明らかにジャンルの異なる文章であることを意識づけられる。
 また、分量を二枚程度に絞って、小見出しを五つくらいにすると必然的に短くまとめて書かざるを得ないので、そういった仕掛けを施していくかも知れない。「わかりやすさ」ということに重点を置くのだから、上に記したように簡潔な表現を促すための小見出し指導の他に、視覚的表現を効果的に使わせる学習もするだろう。図表やグラフ、写真などもレイアウトとともに考えさせる機会を設けてみたい。