教材について
回想と現実の行き来が二重の時間軸を構成しているので、学習者にはやや難しい作品だと思う。人物像の把握なども、例えばルロイ神父も修道院の園長として仕事をしていた過去の姿と、癌を患ってむかしの子どもたちに会いに回る現在の姿とが二重に描かれている。 視点人物は語り手の私であるため、ルロイ神父の内面も彼の推論に支えられて描かれている。やはり中学三年生にもなるとこのくらい複雑な構成の作品を丁寧に読み解いていく学習が必要になってくるのだろう。 描き出されている背景は微妙に戦争を扱っているが、従来の教材とは異なり日本人の視点から描かれたものではなく、強制労働を強いられた外国人であるルロイ神父の心情を推論する日本人の立場から描かれている。このあたりの視点の複雑さにも目を向けて学習を進めてきたい。