教材について

  典型的な課題解決方の文章とは言い難いが、おもしろい文章構成の教材である。三段落構成で、、序論ー本論ー結論の三段構成だが、導入で、歴史学的に高められた問を投げかけて入っている。結論へ至る道筋は、演繹的で、モアイの謎解きからイースター島の種族の滅亡に至る経緯を説明しながら、それを現在の日本や世界の状況へと演繹的に持ち込み結論へと至る。そろそろ中学校二年生だし、筆者の論理展開を丁寧に追わせながら結論を考えさせる学習を仕掛けたい。

環境考古学

 筆者の説明や根拠は明らかに環境考古学によるものである。これって本当におもしろい研究だと思うし、学習者にも是非紹介して様々な環境考古学に触れさせたいなあと思う。諸学問の垣根を取り払って自由に研究する学者が増えてきて、それが学問の活性化につながっている現在、新しい研究領域がどんどん増えていることも考えると、この教材に示されているようなものの捉え方や考え方、研究手法などもじっくりと読ませたい。

演繹的な展開から調べ学習へ

 最初にも述べたことだが、筆者の論理展開は演繹的である。モアイ建造の謎解きがいつの間にか地球の将来と結びつけられている。題名読みから、温故知新のような関係として読ませたくない。食物と人口の関係や人口と自然環境の関係などをしっかり捉えさせた上で、演繹的に現在の地球環境と人口の問題や食糧問題へと転換していることを理解させることを学習のターゲットに置きたい。これは、序論で提示された問題が、結論で新たに提示される問題へとどのように結びつけられたのかという道筋の発見でもあるので、学習プリントもそういう道筋を完成させるものにするだろう。さらに、筆者によって投げかけられた問題、これからの地球をどうするかについての調べ学習は、時間認識による社会認識を行わせるにはちょうどよい。

 過去・・・・現在を捉える鏡としての働き

 これは古典教材などでも学ばせることができるが、この教材では、

  先端的な研究や実験的な試み・・・新しい世界を作り出していくための試行錯誤

  これはなかなか教える教材がないのでこの教材はちょうどよい機会になる。難しいようだが、時間軸は、「過去ー現在ー未来」ではなく、「試行錯誤としての現在」が存在しており、それが新しい未来を創造する土台として働き続けているのである。歴史的にいえば、明治維新に至るまでの幕末志士の働きなどはこういった時間軸で捉えられるだろうし、現在のロボット技術などもそういう位置づけで捉えなければならない。 未来は突然やってくるものではないし、未来を引っ張ってくるための試行錯誤を地道に積み重ねている人々の存在を調べ学習で明らかにさせたい。