教材について

 環境問題を微生物の利用という観点から扱った教材である。文章構成は、序論ー本論ー結論の分かりやすい三段落構成なので、文章構成自体の学習から、環境をテーマにして調べ学習をし、文章表現の学習に持ち込む展開をまず思いつくが、ありがちな展開なので少し引く。でもこれって結構生徒が毎年変わるのだから、やってる方としては定番の展開でも受けている方としては必要な展開ではと思い直す。このことについては昔、高校の文学教材で論文を書いたように思う。定番教材による教師の潜在意識の形成に関するもの。で、それぐらいこの教材は典型的な教材だと思う。

 生徒の様子を観察して説明文を読む力がまだ身に付いていないようなら詳細な読解の授業をするし、文章構成から表現に行くのならば、環境に行かずに他のテーマにするだろう。

数値によるイメージ化

  この教材の中で筆者の説明には数値が多く使われている。客観性を持たせるための表現と言うこともあるのだが、たとえば「一グラムに一億もの微生物」とか言われると、ものすごいイメージが形成される。その後の表現「私たちは微生物に囲まれて生きている」などというレベルではないのではないかと思ったりする。  こういったイメージに始まり、「2000年には約1500万トン、使用済みのプラスチックは1000万トン」などという表現も同様にイメージか出来る。
 しかしここで重要なのは、前者はイメージしやすいのに対して後者は単なる数が提示されているように読めてしまうことだ。数値にだけ向き合わせればイメージか出来る前者と、その因果関係にまで考えを及ぼさねばならない後者との違いである。  微妙なのは、「2010年には日本のプラスチック製品の20%が生分解性プラスチックになる」といわれるとこれ又イメージか出来そうで出来ない。こういった表現を丁寧に読みとる学習でありたい。

例示による説明

 中学校の説明文といえば、「例示」の学習。自分で主張の説明のために例を挙げられるようにするまでにやっぱり三年かかる。この教材も、本論の部分は例示によって説明されているので、学習のポイントは、「考え-例示」の関係付けと例示の働きを理解することになる。
 大筋では環境保護のために微生物を使う例なのだが、挙げられている三つの例は三つ挙げられているだけにそれぞれに意味があるし、相互の関係も考えさせたい。

 ①微生物を利用して環境問題を起こさない例

 ②汚染された環境を微生物を用いて回復する例

 二つを関係づけるキーワードは微生物の分解という働き。ということはそもそも分解できない物質を利用する生活を送っている私たちの姿がどこかで出てこないといけないのだが、いささか記述が弱いので見落としがち。

図による説明

  因果関係を表現するための図がついている。これを読み解くことは簡単なのだけど、文章だけの状態からこの図を書こうとするとちょっと難しくなる。図解表現能力と図解理解能力は表裏一体のものだから、どちらを育成することをねらうにしてもこういった図に触れる機会がある場合、両方の学習を組織しておきたい。 ただ、後半の例示を図式化させることが一番適切なのだが、因果関係を含めて記述が弱いので使えない。私なら図式化の学習は読解の学習と切り離してスキル学習的にやってしまうかも知れない。