教材について

  NHKの番組を見ている学習者は少ないだろうから学習者にとってはなじみの薄い筆者も教師にとってはなじみ深い。この教材は、読書教材であるが、論説文教材としても扱いやすいので、学習者の様子を見ながら読書指導にするか論説文指導にするか考えたい。非連続テキストの読解を重視すると、この教材に付されている図表や写真は、本文の記述とは間接的な関係にあるので、テキストとの相乗効果に目を向けた学習を仕掛けることもできる。

現代生活との比較

 この教材は暗に現代生活との比較を進めながら最後の主張の部分で顕在化した形で現代生活との関係性を述べてくる。そのためひとまず最後まで読ませながら、最後の主張から振り返る形で、前半部分に隠されている現代生活との比較を捉えさせる展開を構想するので、早い段階で文章全体を読ませておきたい。そういう意味では読書教材の扱い方で導入しておきながら、深く読むための学習を仕掛けるだろう。
 前半部分の目の付け所は、

 ①現代的な用語(特に外来語)などで江戸の生活様式を捉えている点
 ②「もったいない」やリサイクル関係の記述

  の二点であろう。現代ではどのようにしているのかということを想起させながら対応させて整理していく学習を基盤に起きながらもう一度最後の主張の部分に戻り、理解を深めたい。

歴史を学ぶ意義ー過去から学ぶ

 江戸時代の生活などに関する研究が進み、町人の生活などが明らかになってきている。様々な書籍を読むと非常におもしろい。中学生にも読ませたいなあと思うのだが、目的が明確でないとたんにお勉強になってしまう。では目的とは何か、それは現代生活との比較により江戸の生活から学んでいくという点にある。リサイクルは現代社会の重要な課題の一つだが、技術革新や生活様式の改善などから解決することを述べた文章には出会っている学習者もまさか江戸時代の生活に解決の糸口があるとは思うまい。

 そういう意味でこの教材は、江戸時代の町人の生活から現代社会の課題を解決するためのヒントを学ぶことを実際にやってくれているので、モデルとしては役立つ。調べ学習から交流という発展学習を仕掛けるとしても、テーマは過去から学ぶということに置きたい。ターゲットとして考えられる時代は、縄文時代と中世、民俗学的歴史学の研究が進んでいる時代でもあるし、文献も集めやすい。さらに教師の興味も持ちやすいからだ。 ただ中世はちょっと中学生にはと思ったりもするので、明治時代にするかもしれない。

あくまで読書指導

 相対化による「今」「社会」などへ認識を深めるためには、ある程度現実に触れた文章を読みながら、世界を広げていく必要がある。読書案内に付されている書物は空間的広がりと時間的広がりを学習者にもたらす良書である。デボラ・エリスの文章はよく教科書に載せたなあという思いさえする。ただいかんせん、悲惨な内容の問題提起方書物が多いため、もう少し前向きで明るくなるような書物も読む機会にしなければ、世の中は真っ暗で深刻なのだというイメージを学習者に与える。