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解説

言語技術とは何か 

 言語技術(language arts)とは、『国語科重要用語300の基礎知識』における鶴田氏の定義によると、「言語活動や言語生活を適切かつ効果的に営むための技術である。」とされている。氏は同書の中で、「読み方、書き方、話し方、聞き方であるといってよい」とも述べている。 国語科教育における学習内容として、ここで示されているような、「ことばの使い方」の習得を目指した時期がいくつも存在している。 1951年の小学校学習指導要領(試案)などでも、「ことばを効果的に使用するための態度や技能」の育成が示されているし、1977年度の学習指導要領などでも、「言語教育の立場」を重視する上でこういった「ことばの使い方」の習得に焦点を当てた学習内容の措定が行われた。 近年では、これまでの国語科教育における心情主義や道徳主義的な流れを批判し、学習内容の明確化の流れとも相まって、言語技術に対する関心が高まっている。1992年には日本言語技術教育学会が設立され、理論的・実践的研究が進められている。

 

技術の習得

 技術を習得するということはいったいどういうことを指しているのだろうか。「使える」ということが習得のゴールであるのだとしたら、その先には「効果的に使える」という段階があるのだろうか。 この二つの学力の定着の段階は、似ているようで大きく違う。前者は、指示されると使えるという定着の状況をふう組み込んだものであるのに対して、後者は明らかに自覚的に技術を状況に照らし合わせて使いこなすことを指している。 そこには、直面している状況に対する判断力が求められるし、技術を用いた際にどのようになるのかを推論してみなければならないし、状況に合わせて技術そのものをファジーに改造していかなければならない。 それらを含み込んでことばは日常生活の中で使えるようになっていく。そういったプロセスまで学校教育で何らかのサポートを進めていかなければならない状況に変わりはない。

 

学習内容の指標化

 学習内容を明確化することは、学習効果を学習方法に照らして吟味するためには重要なことだ。またそれ以上に学習者が自らの学習を自律的に進めていくために、今何のためにどのようなことを学んでいるのか、ということへの理解を深める必要からも大切なことであると言える。 そういった流れの中で、国語科の学習内容は明確化しなければならない。 教授=学習過程の中で、教師と学習者が共有する指標として「言語技術の習得」が効果的に働くことも確かであろう。 しかし、それがことばの学びのプロセスの重要ではあるがある段階を指していることを忘れてはならない。スキル学習によって習得した言語技術が、学習者の言語生活の中で生かされていくまでの道筋はもう少し先まであることも忘れてはならない。そういった先の道筋まで考慮した上で指標として言語技術を学習者と共有することは効果的なことであると考える。 最近の洋書や心理学研究では、スキルの形で学力を捉えるものが多いのですが、(第二言語習得論やコミュニケーション論なんかでも)それは「SKILL」の概念がこれまで述べてきたような要素を含み込んで使われている節が強く感じられる。 内言と外言の区別をつけて学習者を観察すると具体的には、学習者の表現のプロセスをとらえることができます。

 

参考書籍

日本言語技術教育学会東京神田支部
論理的思考力を育てる段落指導用(リライト)教材集成―『国語教育』スペシャル版 (国語教育 スペシャル版)
宇佐美 寛
国語教育は言語技術教育である (宇佐美寛・問題意識集)
渋谷 孝, 市毛 勝雄
「スイミー」の言語技術教育 (実践言語技術教育シリーズ 小学校文学教材編)
波多野 里望
なぜ言語技術教育が必要か
市毛 勝雄
国語力を育てる言語技術教育入門 (21世紀型授業づくり)
鶴田 清司
国語の基礎学力を育てる―学力保障・言語技術・絶対評価 (21世紀型授業づくり)
三森 ゆりか
言語技術教育の体系と指導内容
 

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