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解説

 内言と外言の区別をつけて学習者を観察すると具体的には、学習者の表現のプロセスをとらえることができます。 小学生の段階では、比較的、経験も少なく、認識や思考も自覚的に様々な枠組みを持っているわけではないので、内言と外言のバランスが崩れていることはなく、むしろ、表現することを苦手とする学習者は、「頭の中にあることをことばにする力」が低いということになります。ですから、語彙を増やしたり、頭の中にあることをそのままことばにして表現する練習が必要になります。  

 これに対して、中学生や高校生は、経験も増え、人間関係も複雑になってきますから、当然、内言も自動的に耕され複雑なものになります。そういった複雑になった頭の中にあるものを、ことばにしていくにはかなりの労力が必要となり、「なんとなく」とか「べつに」といった回避するためのことばが用いられるようになります。  

 つまり、内言が複雑になっていくにつれて、それをことばに直説することが困難になりますので、「絞り込んだり(焦点化)」、「まとめたり」、「簡潔にしたり」するような特殊な工夫が施される必要がでてきます。これは、小学校中学年くらいからの作文指導の内容と大きく関わりを持つことですね。「論理」といわれることもありますが、こういった内言を外言化するためのツールを習得することで、表現することにかかるストレスが軽減されていくのはいうまでもありません。  

 表現の際にかかるストレスは、これに加えて、TPOにあわせて内容を作っていくという点がありますが、これは、中学生段階では「言葉遣い」までで、高校生になると「内言を外言化する」際にもTPOに配慮ができるようになってほしいと考えます。

 

図説

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参考書籍

中村 和夫
ヴィゴーツキー心理学完全読本―「最近接発達の領域」と「内言」の概念を読み解く
小川 雅子
「生きる力」を発揮させる国語教育―内言を主体とした理論と実践
上田 功, 野田 尚史
言外と言内の交流分野―小泉保博士傘寿記念論文集
伊藤 敏
内言の序論的考察とその育成 (1972年)

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