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解説 

 生きるために必要な学習内容を全て学校で教えることはできない。この点について、学習内容の精選という発想が生じてくる。 どんなに精選しても、時代は変わるし、偏りが生じてくるのは否めない。そこで、二つの考えが生まれる。  

 1965年にユネスコの成人教育推進国際委員会で、ポール・ラングランから提案された「生涯教育」という概念はうまく輸入されて、現在の生涯学習の考え方を支えているけど、結局は、学校で全部学ばせようとするから窮屈なカリキュラムになってしまうのだから、生涯かけて学べる機会を生み出すことで学校の教育内容は軽減できるという考え方に至っているように思う。  この点については別の項に譲るとして、この項はもう一つの考え方。  

 「学習の転移」について現在は賛否があるのだけれども、実感として手にを考慮に入れて授業を構想することが多い。これは教師教育も一緒だと思う。  簡単に言えば、最も応用性の高い学習内容を学習するべきだという考え方。カリキュラム上で捉えると、以前行った学習が、後の学習に何らかの影響を及ぼすことを指している。  「何らか」というのは、プラスに働く場合(正の転移)とマイナスに働く場合(負の転移)があるから。  問題なのはやっぱり「正の転移」。なぜ転移するのかということを考えたときに、

@同一要素説(ソーンダイク)・・・同じような要素が学習間に存在すると転移が生じるという説。 A一般化説(ジャッド)経験が一般化されて一般原理として認識されたとき、状況だけがスライドし て転移が起こるという説。  

 何を教えるかと言うことを細部にまで詰めていくときに、結局、応用できるようにと配慮すればするほど、汎用性の広い学習条件を構想するし、一般化された原理として言語化する工夫を施す。  だから、この二つの考え方は古いものだけど授業を考えていく上では役に立つように思う。  転移を積極的に認める立場が強調されたのは、メジャーなところで言えば、ブルーナーの『教育の過程』という本。 「適切な学習によって大量の一般的転移が得られるのはまさしく事実である」と述べながら、一般原理とか一般的態度とかを学習すればするほどその後の学習に効果が発揮されるという考え方。  現代はどんどん進歩していて、学ばなければならないことが飛躍的に増加してきているのは事実。学校で全部教えられるわけがないのだけれど、教える内容を同吟味するかは重要な課題。 一般原理や態度にこだわる必要はないと思うけれど、できれば効果的な転移が行われる内容を教えておきたいと願うものでしょう。

参考文献

白石 範孝
他へ転移できる力としての学力―学力を向上させる授業 (小学校国語基礎学力向上シリーズ)
山口大学教育学部附属光小学校
転移のきく学力―発見や創造にせまるために (1970年)
ブルーナー
教育の過程

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