ホーム >行動目標

解説

行動目標とは 

 行動目標とは、新行動主義心理学者、例えばハルやスキナーなどによって唱えられた心理学に大きな影響を受けている。簡単にいえば、人間の認識や思考などの内面的な意識の有り様を外的な行動によって推測しようとする考え方に基づいている。 B.S.ブルーム等による『学習評価ハンドブック』は1974年に出された書籍であるが、この中で提唱された学習成果個人差は、学習の速度の違いであり、どの学習者にも適した方法と適した速度による学習が施されるならば学習効果は均一なものとなるという「完全学習理論」は日本でも広く受け入れられ、それならばまず学習内容を明確化するべきだということで、認識や思考といった人間の内面的な能力を可視化された行動に置き換えて明確化しようとする動きが生まれた。 1970年代後半から1980年代全般にかけて「〜することができる」という記述形態による学習内容の行動目標かが進んだことはいうまでもないが、流れの中盤あたりから、「どの程度までできればよいか」という問題が生まれてきたため、「行動目標」の段階化が進んだ。これを指して「到達度目標」と呼ぶ。 元々ブルームの本には、行動目標は段階的に記述されており、「到達度目標」としての要素は含まれていたが、それを「到達度目標」として捉える動きは評価によって得られた情報をいかに学習者の学習にフィードバックするかという点が問題になってきてからのことである。 いずれいせよ、「行動目標」として捉えた学習内容と学習者個々人に適合した学習方法の照合の作業が進む中で、目標自体が分類され体系化された。この流れを「教育目標分類学」として概念化し、教育目標相互の関係を模索することで学習者の発達の道筋を捉えようとする動きが起こってきた。  

 

行動と行動の連鎖

 行動目標として捉えた学習内容は、当然範囲の広い上位の目標と範囲の狭い快の目標に分類することができる。特に国語科の学習内容に関しては、上位の目標に対して複雑で広範囲にわたる下位の行動目標が見出され、結果的に授業における学習が飽和状態になってしまった。さらに、目標相互の関係性が見えにくく下位の目標の汎用性が非常に高い場合が多く見受けられ、行動目標として学習内容を捉えること自体に疑問が投げかけられた。例えば「ごんぎつねを深く読み取ることができる」という上位の行動目標に対して無限に下位の行動目標が想定できることからも理解できるだろう。 また、下位の行動目標がすべてできるようになったからといって上位の行動目標が達成できるとは限らないという点が非常に大きな問題として指摘された上に、国語科特有の教材の枠組みを超える力と教材の枠組みに縛られる力の関係性が説明できないため、この流れは自然に消滅していった。

 

それでも行動目標化する

 言語活動を中心とした学習を組織する場合、言語活動中の教師のコーチングは非常に重要な指導の機会であり指導方法である。また、学習者が活動の目当てや質を目標として共有して活動にはいることもよりよい言語活動を促すためには効果的な方法である。行動目標は基本的に一連の行動を行った先にある結果の状態を捉える。そのため、プロセスを重視する現在の学習観には合わない気もするのだが、それでもなお、実際に学習の中で学習者の活動を維持し、よりよいものにしていくためには、断片的でもこういった行動目標を与えることの効果は大きい。しかし注意したいのは、現在の活動に対する評価の対象があくまで活動のプロセスにある点である。 活動のプロセスを断片的に行動目標の形で捉える。これは、従来の行動目標が体系の中での広がりと具体化を目指したのに対して、一連の活動のチェックポイントのような時間軸の中での分解であるということである。

 

参考書籍

坂元 昂, 武村 重和
理科・行動目標の分析と評価 (1975年)
小金井 正巳, 森川 久雄
行動目標と授業の科学化 (1975年)
坂元 昂, 溝上 泰
社会科・行動目標の分析と評価 (1976年)
森川 久雄
行動目標の設定と評価―生物教育を中心に (1972年)  

 

Copyright © 国語教育総合情報研究所 All rights reserved