高浦勝義 黎明書房 2004
第一章 生きる力の育成と評価の課題
第二章 絶対評価を中心とした指導要録の改訂
第三章 問題解決評価観の展開
第四章 評価の観点とルーブリックの作成
第五章 単元指導計画の作成と評価計画の立案
第六章 授業と絶対評価の展開
近年、アメリカやイギリスで主に研究が進められている「標準化テスト法」に変わる新しい評価方法には、「Authentic assessment」をはじめとして、「Alternative aseessment」、「holistic assessment」、「performance assessment」などをあげることができる。
これらはどれも、「標準化テスト(standerdized test)」に対するアンチなのだけれども、標準化テストが指摘されていた問題点を何とか改善しようとする試みである。
特にオーセンティック評価は、評価する対象となる学習者の能力やスキルを、より実際の学習に近い形で捉えるための方法であり、評価の結果として得られた学習者に関する情報を効果的に学習や授業改善に生かしていこうとするねらいがある。
客観テストが、細切れの知識やスキルを保有しているかどうか、求められれば再生できるかどうかという点で捉えようとするのに対して、これら「新しい評価」と呼ばれるものは、実際に知識やスキルを用いて何かを行う場面を対象としてその運用力を捉えたり、自らが保有する知識やスキルに対してどのような意識を持っているかを捉えることで、知識やスキルの定着の様相を捉えようとする。
実際には、「知識やスキルを状況に合わせて適切に使いこなせるようになる」ことをねらいにした学習を構想するべきなのだから、客観テストと組み合わせて学習を構想するよりも、新しい評価と組み合わせていく方が効果的であると考えるべきだろう。
しかしながら、自覚的な運用を学習者に促すためには「何を何のために学ぶのか」ということに対する理解が深まっていくことを想定していなければならない。
そこで本書を薦めることとなる。「ルーブリック」は評価規準を明確に言語化することである。そしてそれが教師のみならず学習者自身に獲得され、意識されることで自らの学習を学習者自身が主体的にデザインすることができる。まあデザインするところまでは行かないにしても、自らの学習に対する理解が深まり、目的意識が生じてくるわけであるから、学習効果が高まると言うよりは学習内容が深く定着する可能性を持つという効果が得られると推測できる。
本書はその「ルーブリック」を具体的な実践を例に取りながら解説し、実際にどのように適用していけばよいのかという点に示唆を与えてくれる。