新しい評価を求めて   

       キャロライン・V・ギップス/鈴木秀幸訳 論創社 2001                        

購入する

 

目次

第一章 評価のパラダイムの転換
第二章 評価と学習の関係
第三章 テストのもたらす弊害
第四章 妥当性と信頼性
第五章 クライテリオン準拠評価
第六章 パフォーマンス評価
第七章 教師の評価と形成的評価
第八章 倫理と公正
第九章 教育評価の枠組み

概要

 学力観の新たな展開として、「構成主義」てきなアプローチが進められている。その中で、言語活動を中心とした学習が多く構想され、「活動を通して学ぶ」ことの意義深さが強調されている。しかしその一方で、基礎学力の低下が指摘され、トレーニングによる非文脈的な学習が重視されてきていることも事実であろう。
 こうしたまったく反対とも思える流れが生まれてくるのは、というよりも、学力観のパラダイムチェンジに学習がついてこれないのは、評価が変わらないからである。
 ギップスはイギリスの学者だが、イギリスやアメリカで進められているパフォーマンス評価やオーセンティック評価は、方法としてポートフォリオ評価が導入されたくらいでその根本的な理念は本書を持って日本に移入されたと言っても過言ではない。改めて海外の研究成果が日本にもたらされる遅さに反省する。
 個別の知識を暗記し、テストによって再生することでしか無かった学習評価を改めて見直し、本当に難しいことで卯はあるが、実際に学習者がどのように自分の知識や経験と新しく学んだことを関係づけ、実際の場面に生かしていくための意味ある者として理解しているのかという展が学力の本当の姿であることは言うまでもない。それが分かっていてもなお、従前としたテスト中心の評価方法を残してきたことは評価研究者の遅々として進まぬ研究の遅れによる者である。
 私も評価研究者の一人としてそのことを大いに反省させられる書物であった。しかしながら、パフォーマンス評価もオーセンティック評価も具体的なレベルでどれだけ有効性を持つものであるかと言うことは疑念の範囲を出ない。理念的には大いに理解することができても、日本の教育実践にどれほど生かされていくかと言うことは今後の私たちの研究にかかっているように思われる。
 いずれにせよこの十年間の評価観の変遷を分かりやすくまとめている書物である。1993年までの諸外国の論考しか追い切れていないが、それでもなお現在の日本には新鮮な考え方に思える。

 

ページトップへ
 
Copyright (C) 国語教育総合情報研究所 All Rights Reserved.