納得の構造 日米初等教育に見る思考表現のスタイル  

                          渡辺雅子 東洋館出版  2004                 

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概要

 本書は、思考のプロセスに関する日米比較を中心として、「書く」学習の基礎にある認識力や思考力の内実の違いをまとめた非常に面白い本である。  

 作文を書かせる際に、その内容をどう作らせるかという学習の組織には非常に苦慮するところであるが、どのように内容を作り上げたかということが、どのような文章表現を生み出すかということに直結しているため、どうしても考えざるを得ない学習であろう。 アメリカの初等教育では、日本のような「起承転結」という捉え方をしない。氏がまとめているように、「トピックセンテンス、ボディ、コンクルージョン」という構成で捉えさせる。  

 これは、日本の作文教育の根幹にある、自己の経験を追想していくことで文章を書くというスタイルから、自己の経験であっても、誰かに伝達する(報告)ために、客観的な視点から分析し直して表現することを意味している。  

 これは、日本の中学生以降の意見文や小論文などの文章表現力が非常に低い原因の一つに、客観的に分析して物事を捉えることが苦手であることが挙げられることに関係している。 結論からいえば、文種、つまり文章を書く目的に即した文章表現の方法やその背後にある認識思考の方法がきちんとした形で、(つまり、意図したときに意図した形で運用できるまで)身についていないからである。見方を変えれば文種に対する意識が非常に低いことが指摘できよう。  本書は、そういう意味で日本の子どもたちの表現力に欠けているものを明らかに示唆してくれると共に、それに対してどのように取り組んでいけばよいかということをあわせて示唆してくれる刺激的な書物であるといえる。  

 後半は広くアメリカの教授学習過程に関する言及になっており、学習特に教師と学習者のコミュニケーションのあり方自体が、改善されていくことで、子どもたちの認識力や思考力の育成が改善されることを示唆している。自らの日々の実践を振り返る斬新な視点を与えてくれる。

 

 

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