佐伯胖著 東大出版会 1980
序 章 「どうしたらいいと思う?」
第一章 投票による決定
第二章 民主的決定方式は存在するか
第三章 個人選好に対する社会的規制
第四章 個人の自由と社会の決定
第五章 ゲーム理論と社会道徳
第六章 「公式な立場」からみた社会的決定の論理
第七章 平等な社会と個人の倫理性
第八章 多様性の中に調和を
二人の人間がいて、何か二人で物事を決定しようとすると、「暴力」、「金」、「話し合い」、「権力」によって決定されるという話を聞いたことがある。
私は佐伯氏がいう「社会的決定理論」を教室の中での学習者の主体性を読み解く鍵として使えるような気がして本書を読むに至っているので、そういったことについて話をしようと思う。
学習における主体性を支える要素の一つに、「自らが主体的に学習に関わっているか」という点がある。この点の源に、学習を主体的に選び取っているか、つまり、何をどのように学習するかという点に対する決定権を誰が握っているのかという点がある。
それゆえに、学習の内容や方向性のどこをどのように学習者に決定させるかという点を考える場合、本書に挙げられている様々な決定の仕方やそこで生じる様々な心理を理解しておく必要があると考えた。
自分一人で自分のことをどのように決定するか、という点においても多様な決定の仕方があると思うのだが、問題なのは社会の中で人間相互の関わりや立場の異なりを考慮に入れながら、物事を決定するというその複雑さをどのように読み解いていくか、という点にある。個人的には、個人の決定は「時間軸」、特に過去の経験に基づく将来の予測が核にあるとしても、社会の中ではもっと関係論的で戦略的な決定の仕方があることが非常に参考になった。