教師のための読者反応理論入門    

          リチャード・ビーチ /山元隆春訳    1998    渓水社

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目次

第一章  序論

第二章  テクスト志向の反応理論

第三章  経験志向の反応理論

第四章  心理学的反応理論

第五章  社会的反応理論

第六章  文化研究的反応理論

第七章  実践に対する理論の適応

概要

 ビーチ氏の研究の成果が、日本に取り入れられたのは、山元隆春氏の功績である。読者反応理論が様々な形で日本に導入され、実践レベルでも多くの実践が積み上げられてきた。いうまでもなく文学テクストを読む力は明瞭にとらえがたいものがあり、とらえられたとしてもその発達まで語り得ないのではないか、そういう思いを抱きながらも一方で日々の実践に追われる。「文学教材を読む」ことの質的側面はいったい何か?どんな能力によって支えられているのかという疑問に対して、大きな示唆を得るのが本書ではなかろうか。    

 文学テクストと学習者がどのような関係を取り結ぶのかということに焦点を当てた「スタンス」の研究成果はストーリーを追う読み方から次第に細部へと目を移し始める小学校の読みの能力の発達をとらえ得ていると思われる。また作品の正確な理解から、深い理解へと導かれるための様々な観点の習得にも具体性があり、授業を構想していく上で説得力がある。学習者個人の読みが学級集団のなかでどのようにひろがっていくのかという点に関しての理論的な支柱になり得るものも多く見られる。    

 1990年代後半、国語科における読みの研究は、認知科学や社会学など新しい知見を取り込みつつも読者として学習者をいかに育んでいくのかという問題を見失いつつあった時期だが、そういった時期にこの緒が世に問われたことの意味は現在でも大きいものであったといえる。文学教材の授業に迷いを感じる先生方に是非勧めたい書である。

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